登山道の側に群生するハクサンチドリ Dactylohiza aristata

株元の枯れ落ち葉、植物死骸。
つまりハクサンチドリは・・・「枯れ落ち葉」の中に自生する。
この枯れ落ち葉の多少によって・・・・素晴らしい株にもなるし・・・・
小型にもなる。

 ヨーロッパ アルプス咲くテガタチドリ
   Gymnadenia conopsea

   日本の高山にもヨーロッパアルプスにも・・・・自生。
     同じ木材腐朽菌をラン菌として共生している。
 
  
    第三紀周北極植物なのかも・・・・・                         出典   AOS会報
    

 前年の球根から・・・強い芽が伸びようとするペレポスト栽培のチドリ。
 この伸びるためのエネルギーは・・・・
 光合成とラン菌が供給する糖によって形成されたものである。


 つまり、チドリ、オルキスの自生地というのは、非常に過酷な気象に見舞われる。
 ここで生き続けるのは・・・・葉の光合成のみでは・・・種を保存できない。
 自生地の環境は・・・・風がまともに当たる場所。
 強風で・・・根元から茎が折れることもあろう。
 訪花昆虫を誘うには花茎を高く伸ばすことが必要であるが・・・・・
 これが・・・・風に対して・・・非常に危険な姿でもある。
 
 茎が折れ、葉が痛むことも想定しなければならない。
 草原で・・・強い光が当たるということは・・・・そういう危険があることでもある。
 こういうことは葉の広い「エビネ」とは・・・根本から異なる進化である。
 チドリの自生地には喬木がほとんど見当たらない!
 カタクリの自生地とは大きく異なる場所・・・・木漏れ日が無い!
 上の写真参照。
 森の支配者樹木のないエリアを生息場所にするチドリ・・・。
 月山の1900mの山頂付近は・・・背の低い高山植物・・・・。
 秒速30m、40mの暴風にさらされることもある!

 伊達や酔狂で・・・枯れ落ち葉の中に球根があるのではない。

 左写真の株を掘ったもの。
  1 前年の球根  2新しい球根が形成されている。
  花後に2の新球根に澱粉が貯蔵されるようになる。

 
  問題になるのが前年の球根から発生した根と、
  茎の根本から発生した新根である。
  この根はラン菌と共生している「菌根」である。
  「根毛」が無い!
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ペレポストによるオルキス、チドリ類 栽培法
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 イタリア アルプスの草原に咲くオルキス。
   Orchis italica,
 
   ほとんど月山のウズラバハクサンチドリの条件と同じ。
   チドリの仲間にはヒマラヤの天上の花回廊・・・
   青いけし・・・と同じエリアにも自生・・・。

   北海道では・・・原生花園の湿った場所にも自生していた。 

  
                                               出典   AOS会報  

 
 ウズラバハクサンチドリ
 ペレポストで発芽形成したプロトコーム
山形県 月山に自生するウズラバハクサンチドリ
 クロユリと同じ場所にも点々と自生している。
2015年の東京ドームらん展。
 ランの原点である「オルキス」がメイン展示。

 山形県の月山に有名な「ウズラバハクサンチドリ」が自生していることから、
 ペレポストを開発すると同時に・・・クロユリとともに同時に栽培試作を行ってきた。

 この仲間にはウチョウラン、岩千鳥などもあるが、いづれも・・・枯れ落ち葉の炭素循環で生きてりる地生ランである。
 大型になる種と、小型の種への進化の違いは、枯れ落ち葉の多少、木材腐朽菌による分解速度の遅速の違いである。
 低山、草原に自生する種、亜高山、高山・・・高緯度に自生する種の違いは、枯れ落ち葉の分解養分の多少が大きく
 関係している。

   貧弱な炭素循環のエリアに自生している種。
   豊かな炭素循環のエリアに自生している種。

 オルキスは低山、草原などの豊かな炭素循環のエリアに自生しているが、この種の球根の澱粉を利用して
 トルコなどではアイスクリームを作っている。
 アイスクリームを作れるほどの澱粉を球根に蓄えることは・・・カタクリと非常に似ている。
 ユリ科植物の子孫が・・・ラン科植物という進化である。
 同じ場所で月山ではクロユリもウズラバハクサンチドリも生息しているということは、両種は・・・・
 月山の頂上付近の草地の炭素循環の中で生きているということである。



 

最上オーキッド ガーデンという宇井 清太の蘭園の名前について。
英語のオーキッドは「オルキス」が語源。
オルキスは「睾丸」「キンタマ」!

そういうことで宇井 清太の蘭園は・・・別名・・・最上のキンタマ・・・・ガーデン!
よほど宇井 清太さんは・・・最上のキンタマ・・・をお持ち????
そういう話で・・・らん展の会場が・・・沸いたことがあった。
男なら・・・悪い気がしないでもないが・・・・
「オルキス」の名前は神話の淫乱な「オルキス」から命名されたもの。
「ニンフ」の・・・息子である。


このオルキス、ウズラバハクサンチドリの球根は「澱粉」を蓄える。
春の芽だしから開花し、そのころ、前年蓄えた澱粉を使い果たす!
その頃から新しい葉の光合成で澱粉を作り・・・新しい球根を形成充実させる。
この新旧の球根が二つ作られる頃・・・・・花咲くころ・・・・
株を掘ってみると・・・タマタマが二つ・・・つまり睾丸のようになっているから・・・オルキス、キンタマ。
こういう姿のものを食べたり・・・飲んだりすると・・・・・
男の永遠の夢である「精力絶倫」になるという・・・連想で・・・精力剤とと使用されたようである。
皇帝ネロも・・・召し上がったのかもしれない・・・・
爛熟したローマ帝国。
オルキスは・・・・ローマの貴婦人の夜を濃密にしたランである。
 


横道にそれたが・・・前記した文章の中に、オルキス、チドリ類の栽培上のヒントが隠されている!
それは新旧の球根のチェンジのことである!
道の駅、ホームセンター、山野草園芸店に行くと・・・5月、6月・・・・
山堀り株が販売されていることがある。
プラントハンターは・・・・山に行って・・・蕾のチドリを掘って・・・
鹿沼土、軽石などに無造作に植えて販売している。
これを買っても・・・ほとんどすべて「消耗品」。
トルコではアイスクリームにするほど掘っても「絶滅」しない!
日本では・・・乱掘で・・・簡単に絶滅!
何処が違うのか????

この蕾、花が咲いたとき掘る・・・育てられない原因。
花の咲くころまでは前年の光合成の貯蓄澱粉をエネルギーにして生長する。
これはクマガイソウ、アツモリソウもカタクリも同じ!

チドリ類が・・・球根を作る理由は・・・・春芽を出して、花が咲くころまでの葉は、
光合成を十分行えないからである。
一人前の光合成の働きができるような葉になるには、花が終わるころからである。
このころから、チドリは「種子」を実らせるという作業と、翌年のための澱粉を球根に蓄えるという、
二つの作業を行わなければならない。
このエネルギーを全て葉んぽ光合成で賄っているのか?
ラン菌の力・・・ラン菌が供する「糖」も必要なのかということ。
宇井 清太は・・・必要という視点から、このラン菌による炭素循環栽培法を構築している。
なぜなら・・・チドリもラン菌と共生して発芽し、生き続けるラン科植物に変わりはないからである。
こういうチドリをラン菌の生息しない用土で植えた場合は、ほとんど「消耗品」になる!
カタクリと同じように「3年目の危機」である。
絶種・・・。
翌年の花時ごろまで生きるために必要なエネルギー源である「澱粉」を蓄えることができないからである。
チドリは・・・・2年間「タケノコ生活」・・・・貯金を取り崩す・・・生活である。
近頃、日本の社会問題になっている「老後破綻」である。
年金を取り崩し尽くして・・・。



日本のラン界、園芸界は・・・・こういう「老後破綻」の栽培法を行ってきた。
消防品だから・・・売れる!
東京ドームのらん展で・・・多くの人に「地生ラン」を展示紹介するのは・・・興行としては必要なアイテムであろう。
しかし・・・それを輸入販売・・・栽培を普及するのであれば・・・・
正しい自生地の生態系栽培を構築しての話であろう。

 

そういうことで、宇井 清太はペレポストでアレヤコレヤと・・・・試験してきた。
そうしてようやく解ってきたことがある。
その一つに・・・・ペレポストの新しいものをそのまま使用してはならないということ。
これはアツモリソウ、クマガイソウ、ウチョウラン、サギソウなどにも共通することである。
新しい枯れ落ち葉よりも・・・・
2,3年前の枯れ落ち葉が分解した腐植化した(腐葉土ではない)・・・・リグニン、セルロースが、
「朽ちた」状態のペレポストが熟成した状態のものを使用すると、
非常に調子が良いということが解ってきた。

ペレポストが新しいものが良いランと、熟成したものが良いランがあるということである。
ヒマラヤではアツモリソウとチドリがほとんど同じ場所に自生している場合もあることから、
やはり、熟成セルロース、リグニンとラン菌、養分に共通するものがあるようである。
低地性のチドリ、高山、高緯度のチドリ。
軽石、赤玉などをベースに熟成ペレポストを20から40%の範囲で加減してミックスする。
これで・・・ほとんど成功するようである。


問題になるのが右写真で示すように、「根毛」が無い根である。
アツモリソウ、クマガイソウ、カキランの根と非常に似ている構造を持っている。
ラン菌と共生している「菌根」を形成している。
岩千鳥は「根毛」を持っている!
ランの進化は多様である。
しかし、ラン菌と共生して生き続けていることに違いはない。


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